固形がん労災認定を100mSv以上としている「当面の労災補償の考え方」

 厚生労働省の「電離放射線による傷害の業務上外に関する検討会」は、労災申請が「労規則35条別表1-2」疾病リスト」に無く、それまでに検討されていない新たな疾病の場合、その都度「医学的知見報告書」に基づく「当面の労災補償の考え方」を作成しています。
    胃がん・食道がん・結腸がん(2012年9月28日)
    膀胱がん・喉頭がん・肺がん(2015年01月28日)
    甲状腺がん        (2016年12月16日)
    肝がん          (2017年10月27日)
    膵がん          (2018年06月27日)
    脳腫瘍  (2020年03月19日)
    咽頭がん (2020年03月19日)
    前立腺がん(2022年06月28日)
    腎臓がん (2022年12月23日)
    直腸がん (2023年05月17日)
    精巣がん (2023年05月17日)
 固形がんの労災認定業務はそれぞれの固形がんに対する「当面の労災補償の考え方」に沿って行われています。

15種類のがんの「医学的知見報告書」の被ばく線量とがんの増加に関する部分の要点
(1)がんの発症あるいは死亡が統計的に有意に増加する最小被ばく線量については、文献調査で知見が得られなかった。(ただし、胃がん、食道がん、結腸がんについては、100rad(1Sv に相当)以上の被ばく群で、がんのリスクの有意な増加が認められたとする報告がある。)
(2)そこで、統計的検出力の高い全固形がんに関する解析に着目してリスクが有意に増加する被ばく線量を確認した。
★UNSCEAR2006年報告(過去の調査が網羅されている)を要約したUNSCEAR2010年報告では、固形がんについて「100 から 200mGy 以上において、統計的に有意なリスクの上昇が観察される。」と記載されている。
★国際放射線防護委員会(ICRP)は、がんリスクの増加について、疫学的研究方法では100mSv未満でのリスクを明らかにすることは困難であるとしている。
★日本の食品安全委員会の評価結果では、多数の疫学調査を検討した上で、「食品安全委員会が検討した範囲においては、放射線による影響が見いだされているのは、通常の一般生活において受ける放射線量を除いた生涯における累積の実効線量として、おおよそ 100mSv 以上と判断した。」「100mSv未満の線量における放射線の健康影響については、疫学研究で健康影響がみられたとの報告はあるが、信頼のおけるデータと判断することは困難であった。種々の要因により、低線量の放射線による健康影響を疫学調査で検証し得ていない可能性を否定することもできず、追加の累積線量として 100mSv 未満の健康影響について言及することは現在得られている知見からは困難であった。」とされている。

15種類の固形がんに関する「当面の労災補償の考え方」の放射線被ばくに関する事項
 ①個別の疫学調査あるいは一般的な結論から100mSv以上で放射線被ばくと発症の関係がうかがえること
 ②放射線被ばくからがん発症までの期間が少なくとも5年以上であること
 ③放射線被ばく以外の要因についても考慮する必要があること
 などを含めて、総合的に検討する

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