原発被ばく労災の極端に低い固形がんの労災認定率
「当面の労災補償の考え方」を見直し、100ミリシーベルト未満を労災認定せよ
増加する原発労働者の被ばく労災申請・認定
原発や医療分野などで、放射線被ばくによる労災補償認定は常態化しています。
原発被ばく労働者の放射線被ばく障害による労災認定は、2024年3月までで計31件(臨界事故の急性放射線障害3名含む)で。発生頻度が増加傾向を示しています。
問題点1・・・推定される被ばく労働者の健康被害の規模に比べ労災申請・補償は氷山の一角
◆原発被ばく労働者全体の健康被害は集団線量から推定できます。原発推進で蓄積した原発被ばく労働者全体の集団線量は約4300人・シーベルトです。広島長崎の原爆被爆者の疫学調査から10人・シーベルト当たり1人のがん・白血病死が引き起こされることが分かっています。つまり、原発被ばく労働者の健康被害はがん死亡だけでも400人規模で、死亡に至らない「り患」やがん以外の疾患を含めれば健康被害はさらに大規模と推定されます。現状の労災補償の規模はあまりにも小さいのです。
問題点2・・・極めて低い固形がんの労災認定率(100ミリシーベルト以上で労災認定)
◆固形がんの労災認定率は14%で、その他の61%に比べ極めて低い状況です(2022年度末)。
厚労省が公表している労災補償の状況(2008~2022年度末)
がんの種類 | 労災補償申請件数 | 支給決定件数 | 申請に対する支給決定率 |
固形がん | 36件(申請の61%) | 5件 | 14% |
固形がん以外 | 23件(申請の39%) | 14件 | 61% |
全体 | 59件 | 19件 | 32% |
3か国原子力施設労働者の疫学調査で50ミリシーベルト以下でも閾値なし直線関係が明らかに
◆厚労省は、国連科学委員会(UNSCEAR)の2010年報告で固形がんに関して「被ばく線量が100から200mSv以上において統計的に有意なリスクの上昇が認められる」と記載されていることを根拠としています。
◆2023年8月、国際がん研究機関(IARC等)によって進められてきた大規模で長期にわたる英、仏、米3か国の原子力施設労働者の疫学調査(INWORKS)の結果、0~50mSvの低線量域でも固形がんの過剰発生と被ばく線量との間に「閾値なし直線関係」があることが統計的有意に示されました。
「当面の労災補償の考え方」を見直せ
厚生労働省には、最新の知見に沿って「当面の労災補償の考え方」を見直し、100mSv未満の労災補償を確実に行うことが求められています。
Copyright(c)ヒバク反対キャンペーン.All rights reserved.