当面の労災補償の考え方(100mSv以上で固形がん労災認定)を撤回させよう
厚生労働省の「当面の労災補償の考え方」では固形がん発症と被ばく線量との関係については「100ミリシーベルト以上で放射線被ばくとがん発症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まる。」とされています。その根拠は、2010年国連科学委員会報告(UNSCEAR)に「被ばく線量が100から200mSv以上において統計的に有意なリスクの上昇が認められる」と記載されていることです。
2023年INWORKS報告:固形がん過剰死と被ばく線量は0~50mSv でも「閾値無し直線関係」
国際がん研究機関(IARC)を中心に3か国(英、仏、米)原子力施設労働者の大規模な疫学調査(INWORKS)が長年取り組まれてきています。
昨年8月に公表されたINWORKS2023年報告は、100mSv以下、0~50mSvの線量範囲でも固形がんの過剰死亡リスクと被ばく線量の間に「閾値なし直線関係」があることを統計的有意に示しました。
INWORKSで閾値なし直線関係が統計的有意に示された線量範囲の下限
2015年報告 | 白血病を除く全てのがん過剰死:0~100mSvでも有意 固形がん過剰死:0~600mS全域で有意 |
2023年報告 | 固型がん過剰死:0~50mSvでも有意 |
厚労省は「当面の労災補償の考え方」を見直せ
「最新のINWORKS2023年報告によって50mSv以下でも『閾値無し直線関係』が統計的有意に示されました。厚生労働省に『当面の労災補償の考え方』の見直しを求めましょう。そのための「検討会」開催を求めましょう
参考資料・・・低線量域で「閾値なし直線関係」が確実に・・・世界の疫学調査の流れ
CT検査の小児がん、原爆被爆者、原子力施設労働者などの大規模な疫学調査での疫学調査によって100ミリシーベルトよりもはるかに低い線量域で被ばく線量に比例して被害が増加することが分かっています。アメリカ放射線防護委員会、国際放射線防護委員会もこれを認めています。最近の大規模疫学研究は「閾値なし直線モデル」を支持と評価した米国放射線防護委員会の Commentary No.27
2018年5月、米国放射線防護委員会(NCRP)は「最近の疫学研究の直線しきい線量なしモデルと放射線防護への示唆」(NCRP Commentary No.27)を出版しました。
内容は、主に10年以内に行われた、原爆被爆者疫学調査と低線量被ばく集団の疫学調査28件を、疫学的方法、線量測定、統計的アプローチについてそれぞれ検討し、疫学研究が「閾値なし直線モデル」をどの程度支持するかを評価したものです。
表1に示すように、29件中20件(69%)が「支持」で、その内、強い支持が5件、中程度の支持が4件、弱い~中程度が11件という結果になりました。
表1 原爆被爆者疫学調査と低線量被ばく集団の疫学調査28件(計29件)の検討結果
「強く支持」と評価された5つの調査で示された「被ばく線量とがん発生の関係」
図1 原爆被爆者疫学調査14報による「過剰相対リスクと被ばく線量の関係」
図2 米、英、仏3か国原子力施設労働者の疫学調査(INWORKS)による「相対リスクと被ばく線量の関係」
図3 マサチューセッツ州結核透視患者と原爆被爆者の「乳がんと被ばく線量の関係」
図4 胎内又は若年の原爆被爆者の「がんと被ばく線量の関係」
図5 9コホートのプール解析による「小児甲状腺がんと被ばく線量の関係」
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