放射線被曝の歴史
著者:中川保雄    出版:技術と人間 1991年9月
増補版 放射線被曝の歴史
アメリカ原爆開発から福島原発事故まで
出版:明石書店 2011年10月


今日の放射線防護の基準とは、核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段なのである。

目次(「おわりに」は増補版による)

1 放射線被害の歴史から未来への教訓を
        ―― 序にかえて ――
2 アメリカの原爆開発と放射線被曝問題
   全米放射線防護委員会の誕生
   マンハッタン計画の放射線科学者
   戦前の被曝基準と放射線の被害”
3 国際放射線防護委員会の誕生と許容線量の哲学
   ICRPの生みの親
   許容線量の誕生
   アメリカの核開発と許容線量
   ICRP一九五〇年勧告
4 放射線による遺伝的影響への不安
   原爆傷害調査委員会(ABCC)の設立
   ABCCによる遺伝的影響調査
   倍加線量と公衆の許容線量
5 原子力発電の推進とビキニの死の灰の影響
   原子力発電でのアメリカの巻き返し
   ビキニの死の灰の影響
   BEAR委員会の登場
   許容線量の引き下げ
   ICRP一九五八年勧告
   国連科学委員会
6 放射線によるガン白血病の危険性をめぐって
   微量放射線の危険性への不安の広がり
   死の灰によるミルクの汚染
   ガン・白血病の「しきい」線量
   広島・長崎での放射線障害の過小評価
7 核実験反対連動の高まりとリスク−ベネフィット論
   核実験反対運動の高まり
   リスク−ベネフィット論の誕生
   一九六〇年の連邦審議会報告とBEAR報告
   ICRP一九六五年勧告
8 反原発運動の高まりと経済性優先のリスク論の進化″
   反原発運動の高揚
   科学者による許容線量批判の高まり
   原発推進策の行きづまり
   放射線被曝の金勘定とコスト−ベネフィット論
   BEIR−1報告
   ICRPによるコスト−ベネフィット論の導入
   生命の金勘定
   原子力産業は他産業より安全
   ICRP一九七七年勧告
9 広島・長崎の原爆線量見直しの秘密
   原爆線量見直しの真の発端
   マンキューソのバンフォード核施設労働者の調査
   絶対的とされたT65D線量の再検討へ
   軍事機密漏らしの高等戦術
   BEIR−3報告をめぐる争い
   日米合同ワークショップによるDS86の確定
10 チェルノブイリ事故とICRP新勧告
   ICRP勧告改訂の背景
   新勧告につながるパリ声明
   チェルノブイリ事故と一般人の被曝限度
   新勧告とりまとめまでの経過
   アメリカの放射線防護委員会と原子力産業の対応
   国連科学委員会報告
   BEIR−5報告
   線量大幅引き下げのカラクリ
   新勧告最大のまやかし
11 被曝の被害の歴史から学ぶべき教訓は何か
   時代の変化とともに広がる被曝の被害
   防護基準による被害への対応の歴史
   現在の被曝問題の特徴
   日本の被曝問題の特徴
   放射線による食品汚染問題
12 おわりに
   増補 フクシマと放射線被曝
    1 フクシマ事故の特徴と労働者・住民の大量被曝
    2 100ミリシーベルト以下の被曝も危険
    3 フクシマの汚染・被曝対策とICRP
    4 放射線被曝との闘いから脱原発へ
    5 フクシマが示すもの
   旧 版 あとがきにかえて
   増補版 あとがき    文 献