イチエフ被ばく労働の状況と課題

緊急時作業従事者
表1.2011年3月~2011年12月の各月従事者数、被ばく線量(出典:東電報告)
期間東電社員下請け等下請け等の割合
(%)
従事者数被ばく線量(mSv)従事者数被ばく線量(mSv)
最大値平均値最大値平均値
2011-031696670.3631.532286238.4214.1557.4
2011-04165759.606.66420449.614.3571.7
2011-05147733.423.14582848.803.3779.8
2011-06135116.292.12640289.503.0882.6
2011-07135131.131.69652161.972.4382.8
2011-08128623.331.72623066.502.2082.9
2011-09120711.351.45600033.402.0183.3
2011-10117936.351.57562323.501.8482.7
2011-11118013.401.07558023.031.4682.5
2011-12119223.201.10540819.201.4381.9
緊急時以降も高線量下での作業が続く
汚染水処理、建屋内の線量調査・水位測定・写真撮影、構内の除染・フェーシング、不要タンク解体、原子炉建屋カバー設置、4号炉燃料プールからの使用済み燃料取り出し、凍土遮水壁建設、原子炉格納容器内のデブリ調査のための、除染・壁の穴あけ・デブリ調査などの作業、燃料プールの燃料取り出しのための、建屋カバー除去・除染・取り出し装置の設置、1/2号機排気筒の解体などの作業が行われた。
高汚染SGTS配管(最高160mSv/h)の撤去作業が行われている。

作業従事者の推移
事故発災以降増加し2011年7月にピーク(月7800人台)となり、そ後減少し2011年8月~2013年9月は概ね横ばいで推移した。
2013年10月ごろから増加し始め、2015年3月に月1万2300人台のピークとなる。
2014年4月から2016年2月にかけて、準備を含め、凍土遮水壁の建設工事が行われた。これが2015年3月のピーク前後の従事者数の増加となっている。
その後減少傾向が続いた後、2019年4月~2022年3月は7000人前後で推移した。 2022年3月以降、増加傾向が続いている。
変動の大部分は下請け等従事数が占めている。

表2.イチエフ作業者の推移
・2012年1月から2016年3月迄に新たに東電社員1,430人下請等25,939人が従事。
・2016年4月から2021年3月迄に東電社員2,456人下請け等22,568人が従事。下請け等が90%を占める。
・2021年4月から2024年3月末迄に東電社員1,753人下請け等14,746人が従事。下請け等が89%を占める。
表1.緊急時作業従事者とその後の従事者(2022年3月まで)
期間 2011/03~2011/12
緊急時作業従事者
2012/01~
2016/03
2016/04~
2021/03
2021/04~
2024/03
東電社員 3,282人 1,430人 2,456人 1,753人
下請企業 16,308人 25,939人 22,568人 14,746人




平日1日の従事者数の推移
・発災以降増え続け、2015年2月~3月に平日1日の従事者が7000人を超えた。その後徐々に減少し、2019年4月~2022年5月はおおむね3000人台で推移した。2022年6月以降は4000人台で推移している。
出典:廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議(2019.05.30)資料2-1「廃炉・汚染水対策の概要」
       〃              (2020.01.30)    〃
       〃              (2022.04.27)    〃
       〃              (2023.03.30)    〃
       〃              (2024.09.28)    〃
表4 平日1日あたりの従事者数の推移(2013年4月~2024年02月 実績数)
年月 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
1月   3730 6570 6370 5850 4930 4190 4120 3910 3920 4590 4430
2月   4020 7130 6720 6110 4970 4400 4210 4220 4170 4640 4670
3月   4270 7450 6360 5940 4740 3980 3920 3890 3890 4550
4月 2950 4450 6940 5790 5470 4140 3440 3580 3020 3620 4360
5月 3060 4840 6800 5940 5590 4260 3610 3570 3200 3550 4120
6月 3130 5490 6900 5910 5530 4250 3610 4020 3680 4100 4480
7月 2990 5730 6740 5980 5460 4260 3630 3980 3690 4170 4600
8月 3130 5800 6690 5850 5380 4260 3660 3850 3020 3500 3540
9月 3290 6440 6670 5740 5230 4210 3730 3770 3500 4270 4590
10月 3220 6220 6830 5920 5150 4050 3790 3930 3800 4420 4640
11月 3410 6600 6450 5960 5090 4160 3990 4070 3890 4620 4500
12月 3540 6890 6430 6010 5050 4270 4070 4060 3850 4410 4640




高線量下の被ばく労働が長期化し、下請けが被ばく労働を担うという事故前と同じ状況になってきている。
事故発生から2016年3月末までの5年間では、従事者4万7千人のうち20%を超える1万人が20mSv以上被ばくし、その86%を下請け労働者が占めている。
2016年4月から2021年3月末までの5年間では、下請け労働者2万2568人の10.9%の2459人が20mSv以上被ばくしている。
表5 20mSvを超えて被ばくした労働者
所属 2011年3月~2016年3月 2016年4月~2021年3月 2021年4月~2024年3月
所属 従事者計 20mSv超え 比率 従事者計 20mSv超え 比率 従事者計 20mSv超え 比率
東京電力 4712人 1431人 30.4% 2456人 92人 3.7%
協力企業 42244人 8646人 20.5% 22568人 2459人 10.9%
合計 46956人 10077人 21.5% 25024人 2551人 10.2%







・2024年3月現在、構内のほとんどの地点では毎時10μSv以下となっている。原発建屋周辺では毎時750μSv、毎時270μSv、毎時110μSvといったホットスポットが残っている。
・ベント作業により放射能汚染されたSGTS配管(最高160mSv/h)は撤去作業が行われている。
・建屋内は今もなおレベルが桁違いに高く、非常に危険な環境である。

2018年4月から2019年3月の1年間
2018年4月から2019年3月の1年間に東電1443名、下請9863名、合計1万1306名が従事した。
その内、東電192名、下請け1663名、合計1855名が、2016年4月からの放射線管理期間の新規従事者であった。
最大被ばく線量は19.90mSv、平均被ばく線量は2.44mSv、総被ばく線量は27.5人・Svであった。
これらは事故後8年間で最も低くなっている。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が6.3~14.1mSvと高いレベルが続いている。
最大累積線量は2017年6月に17.11mSvの人(協力)が出て、その後8月まで被ばくしていない。12月に19.90mSvの人(協力)が出てその後最大累積線量は2018年3月まで増加せず、この労働者は放射線業務から外れたと推定される。

●従事者の16.1%、1815名が白血病労災認定基準の年5mSv を超えた
事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者の7%が白血病労災認定基準の年5mSvを超える被ばくをしたのに比べると、2倍以上の高い割合となっている。

2017年4月から2018年3月の1年間
2017年4月から2018年3月の1年間に東電1530名、下請1万2413名、合計1万3943名が従事した。
その内、東電238名、下請け2855名、合計31893名が、2016年4月からの放射線管理期間の新規従事者であった。
最大被ばく線量は32.74mSv、平均被ばく線量は2.69mSv、総被ばく線量は37.5人・Sv、20mSv超えは74人(すべて下請け)であった。
これらは事故後7年間で最も低くなっている。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が7.5~12.9mSvと高いレベルが続いている。
最大累積線量は2017年4月から3カ月で累積20.56mSvの人が出て、7月には25.53mSv、8月には29.53mSv、9月には29.57mSvとなっている。最大累積線量は2018年2月まで後増加せず、この労働者は放射線業務から外れたと推定される。
東電は、「年50mSv 基準」に対しては「年18mSvに達した時点で状況を確認し、以降の線量管理方法等について関係者と協議する(2013年12月3日)」としているが、実際には更に被ばくさせていると考えられる。
最大累積線量は2017年度末には32.74mSvとなっている。

●20mSvを超えた労働者
2017年度に20mSvを超える被ばくをした労働者は74名にのぼる。事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者で20mSvを超えた人は7名であり、イチエフではその10倍にも達する過酷な被ばく状況である。

●従事者の16.8%、2348名が白血病労災認定基準の年5mSvを超えた
事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者の7%が白血病労災認定基準の年5mSvを超える被ばくをしたのに比べると、2倍以上の高い割合となっている。

2016年4月から2017年3月の1年間
2016年4月から2017年3月の1年間に東電1678名、下請約1万4174名が従事した。平均被ばく線量は2.87mSv、総被ばく線量は45.5人・Sv、20mSv超えは210人であった。
これらは事故後6年間で最も低くなっている。高線量・大量被ばくをもたらした凍土遮水壁工事が終わり、2・3号機格納容器内調査では遮へいにより被ばく線量を一定抑えられたことによると考えられる。
しかし、福島原発事故前の全国の原発労働者の被ばく状況に比べればはるかに高いレベルである。
2009年度全国の原発労働者の被ばく状況

●高いレベルが続く最大被ばく線量
下請け労働者の各月の最大被ばく線量が7~19mSvと高いレベルが続いている。
東電は、「年50mSv 基準」に対しては「年18mSvに達した時点で状況を確認し、以降の線量管理方法等について関係者と協議する(2013年12月3日)」としているが、実際には更に被ばくさせている。
2016年4月からわずか3カ月で累積32.46mSvの人が出ている。最大累積線量は11月には38.76mSv、12月には38.3mSvとなっている。最大累積線量はその後増加せず、この労働者は放射線業務から外れていると推定される。

●20mSvを超えた労働者
2016年度に20mSvを超える被ばくをした労働者は210名にのぼる(2017年4月末発表値)。事故前の2009年度、全国の原発被ばく労働者では7名であり、イチエフではその30倍にも達する過酷な被ばく状況である。

●従事者の18%、2845名が白血病労災認定基準の年5mSv を超えた
白血病労災認定基準の年5mSv を超える被ばくをした労働者は、2009年度、事故前の全国の原発被ばく労働者の7%であった。2016年度、イチエフでは従事者1万5852名の17.9%、2845名にのぼる(2017年4月末発表値)。

表1 2016年度の被ばく状況(2016年4月~2017年3月)
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
積算20mSv超え人数 0 0 6 15 25 32 53 78 93 114 154 210
積算5mSv超え人数 42 148 395 639 817 1003 1270 1586 1860 2136 2471 2845
4月以降従事人数 9897 10693 11616 12294 12823 13383 13857 14338 14651 15041 15503 15852
各月最大線量(mSv) 9.78 9.70 13.81 10.70 7.10 8.80 8.34 12.00 12.60 11.00 13.70 18.92
積算最大線量(mSv) 9.78 19.28 32.46 33.36 35.81 36.21 36.21 38.76 38.83 38.83 38.83 38.83


表2 2016年4月~2017年3月の被ばく状況
区分(mSv) 東電社員 協力企業
20超え~50以下 0 210 210
10超え~20以下 20 1140 1160
5超え~10以下 89 1386 1475
1超え~5以下 401 4361 4762
1以下 1168 7077 8245
1678 14174 15852
最大(mSv) 14.75 38.83 38.83
平均(mSv) 1.25 3.07 2.87

Copyright(c)ヒバク反対キャンペーン.All rights reserved.