国際がん研究機関(IARC)の研究者グループによる
広島長崎疫学調査(LSS)と国際原子力施設労働者疫学調査(INWORKS)の比較研究

国際がん研究機関の研究者グループが、広島長崎疫学調査(LSS)から対象者を20歳~60歳で被ばくした人々に絞り、2015年に発表されているイギリス、フランス、アメリカ3カ国原子力施設労働者の疫学調査(INWORKS)の結果と比較検討しました。
結果は、「Radiation and Environmental Biophysics volume 60, pages23–39 (2021)」に公表されています。

主な内容は、下記の2点です。
①広島・長崎の原爆被爆者の固形がん死の線量効果関係(dose-responce)が「閾値なしの直線関係であることを初めて明確にしました。
②「線量線量率効果係数(DDREF)」について初めて系統的に言及しました。
 (注)公衆や労働者の放射線防護基準は、放射線被ばくのリスクを広島長崎の疫学調査結果の半分として勧告されている。

調査対象と特性
年齢を20歳以上、また被ばく期間等に制限を加えて、原爆被爆者は45,625人、核施設労働者は259,350人が対象とされました。

調査集団の特性Life Span Study
N=45,625
INWORKS
N=259,350
被ばく期間19451945-2005
調査期間1950-20031950-2005
男性の割合36%88%
被ばく時年齢平均37.3[20.1~59.9]平均37.7[19.4~71.5]
到達年齢平均65.9[27.6~112.1]平均60.0[25.5~112.3]
結腸線量(mGy)平均115.7[0.0~2,905.2]平均19.2[0.0~1,237.1]
結腸線量100mGy以下の割合78%96%
赤色骨髄線量(mGy)平均134.3[0~3,630.0]平均17.6[0.0~1,131.5]
人・年(百万)1.486.18
死因
全がんの件数(%)37,943(83.2%)59,118(22.8%)
固形がんの件数(%)7,982(21%)16,279(27.5%)
白血病の件数(%)196(0.5%)464(0.8%)

固形がん死亡の比較
固形がん死に関しては、ERR/Gyの評価値は直線線量―効果関係モデルにあてはめれば、LSSとINWORKSの調査間で、その値の大きさはよく似ています。
ERR/Gyは、LSS集団では0.25(0.11~0.52)で、INWORKS集団では0.26(0.01~0.52)でした。
直線線量―効果関係モデルが適していることが分かりました。一方、直線―2次曲線の線量―効果関係はほとんど支持されないことが分かりました。
LSSとINWORKSで、固形がん死亡のERR/Gyが低い線量までほぼ同じ値を示したことは、線量線量率係数(DDREF)が1であることを意味しています。

0-100mGy0-200mGy0-300mGy0-500mGy0-1000mGy全体
Life Span Study
平均結腸線量14.225.234.450.277.0115.7
人・年1,158,8701,266,4401,320,5601,382,4401,442,1001,480,340
観察死亡者数6,0696,6646,9737,3157,6867,982
ERR/Gy0.380.500.450.250.240.28
90%信頼区間-0.27~1.070.17~0.860.21~0.700.11~0.410.15~0.340.18~0.38
P(vs. null model)-0.3430.0110.0010.004<0.001<0.001
過剰死亡数45.0116.8146.8128.0<191.4<321.1
INWORKS
平均結腸線量9.412.814.515.916.316.4
人・年5,943,5506,104,4106,150,1006,173,4706,178,1506,178,320
観察死亡者数15,09415,83216,07916,23516,27816,279
ERR/Gy0.490.630.320.260.310.29
90%信頼区間-0.21~1.230.21~1.070.01~0.650.01~0.520.09~0.540.07~0.53
P(vs. null model)0.2530.0120.0920.091<0.021<0.026
過剰死亡数93.5179.4111.8102.5<129.7<124.3

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