凍土遮水壁の工事で高線量・大量被ばく

除染や放射線遮蔽工事などの準備を含め、2014年4月から2016年2月にかけて、凍土遮水壁の建設工事が行われた。
次のような特徴をあげることができる。
・建設現場は構内で最も高線量の高い領域の原発建屋周辺であった。
・特に2~4号機のタービン建屋周辺は3号機水素爆発による瓦礫の飛散などで高く、0.5~5mSv/h。
・除染と建設作業に約2200人が動員された。
・除染と並行して作業した2014年5~9月は1ヵ月の最大被ばくが18mSv 前後であった。
・除染後も0.2~1ミリシーベルト/時といった高線量率で、1人が働ける時間は3時間が限度であった。
・2014年5月から12月まで凍土遮水壁建設工事の被ばくが第1原発の月別被ばく線量の最大となった。
・2014年度の従事者は1751人で、そのうち76%の1335人が年間5mSv 以上被ばくした。
・2015年2~4月の工事の最盛期は1ヵ月に延べ2万人超が働いた。
・2015年4月にも、凍土遮水壁建設工事の最大被ばく線量がイチエフの4月最大被ばく線量であった。
・全期間の設備の施工に従事した作業者は延べ人数で27万4000人。
・全期間1人あたりの平均被ばく量15.3mSv、50mSv以上116人、最大被ばく線量75.51mSv、集団被ばく線量33.9人・Svであった。
・死亡事故が発生している(2015年8月8日、バキュームカー清掃中の挟まれ事故)。

表1 凍土遮水壁工事の月間最大被ばく線量(2014年4月~2015年4月)
年.月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
線量(mSv) 約10 20.70 16.89 18.69 17.13 18.22 14.92 15.92 16.74 約7 約13 約12 15.60

3カ月で40mSvが基準
元請けの鹿島建設では年限度の8掛け40mSv/年を限度とし、これを超えないように38mSvを超過したら作業から外す線量管理を実施している。
2014年7月7日の第24回特定原子力施設 監視・評価検討会の資料2「福島第一原子力発電所における放射線管理に関する検討課題 」によると、
現場では、0.2mSv/hの線量率レベルで1日3時間、週5日として、3カ月間で年限度の80%40mSvに達するとして線量管理が行われていた。(2014年6月12日の調査)
資料2の報告書は、「4号機オペレーションフロアでの当初の値より高く、今後の類似高線量率の作業で安易に適用されるのではないかと危惧しています。」と問題提起している。

2,3号機海水配管トレンチ建屋接続部止水工事の被ばく
凍土遮水壁と直交する海水配管トレンチの汚染水を取り除き建屋接続部で止水する工事は被ばく線量が高い工事であった。
2014年2月~9月の8カ月間で、243人中、2人が40mSv超え、32人が20mSv超え、91人が5mSv超えとなっている。
表2 2,3号機海水配管トレンチ建屋接続部止水工事の被ばく(2014年2月~9月)
区分(mSv) 元請 協力A社 協力B社 その他
45超え~50以下 0 0 1 0 1
40超え~45以下 1 0 0 0 1
35超え~40以下 2 0 0 0 2
30超え~35以下 1 3 1 0 5
25超え~30以下 0 15 0 0 15
20超え~25以下 1 7 0 0 8
15超え~20以下 5 4 7 1 17
10超え~15以下 2 7 4 0 13
5超え~10以下 5 13 6 5 29
0~5以下 20 59 62 11 152
37 108 81 17 243
  ・元請会社(工事管理)          ・協力会社A(削孔・凍結管設置・凍結運転管理)
  ・協力会社B(放射線防護・氷投入作業)  ・その他会社
  出典:2014年10月31日の第28回特定原子力施設 監視・評価検討会の資料1